大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所大法廷 昭和24年(ね)107号 決定

主文

本件請求を棄却する。

理由

本件請求の理由は、末尾添附の上告趣意書提出期間回復請求の申立と題する書面記載のとおりである。

よって、本件被告事件の記録によると、被告人は右被告事件について、昭和二三年一二月一五日福岡高等裁判所で有罪の判決言渡を受け、同月一八日当裁判所に対し上告の申立をしたので、当裁判所は公判期日を昭和二四年七月一九日と指定し、その通知書を同年二月二二日被告人に対し郵便に付して送達したところ、被告人は同年七月四日の上告趣意書提出期間最終日の後である同年七月一五日に至り、弁護士清水正雄を弁護人に選任し、同弁護人から、被告人のため本件上告趣意書提出期間回復請求を申立てた事実を認めることができる。そして、被告人の住居は、福岡市吉塚五丁目五七番地ノ六であるから、被告人は、当裁判所所在地に住居又は事務所を有する送達受取人を選任届出すべきに拘らずこれを届出ていないこと亦右記録によって明らかである。してみれば、当裁判所が郵便に付して送達した前記公判期日通知書は郵便に付したときに被告人に送達されたものと看做されるものである。しかるに、本件上告趣意書提出期間回復請求の理由とするところは、前記公判期日通知書は、被告人の三女である八才の女児が一人で留守し他の家人全部不在の時被告人方に到達し右女児が之を受取り棚の上に置いたところそれが壁の間に落ち、被告人はその到達したことを知らないでいたが、偶々同年七月四日頃掃除の際之を発見したため所定の期間内に上告趣意書を提出することができなくなったというのであって、右の如き事由は、被告人又は代人の責に帰すべからざる事由によって、右期間内に上告趣意書を提出することができなくなったものとはいい得ないから、本件期間回復の請求はこれを許すことはできない。

よって、刑訴施行法二条により旧刑訴三八九条を準用し、主文のとおり決定する。

右は、裁判官全員の一致した意見である。

(裁判長裁判官 塚崎直義 裁判官 長谷川太一郎 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 霜山精一 裁判官 井上 登 裁判官 真野 毅 裁判官 小谷勝重 裁判官 島 保 裁判官 齋藤悠輔 裁判官 藤田八郎 裁判官 岩松三郎 裁判官 河村又介 裁判官 穂積重遠)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例